最近、同じ値段で個数が少なくなるという、パッケージ詐欺的事案が続いております。冷凍からあげの個数は減少の一途を辿り、ウインナーの袋はぱんぱんに膨らみ、駄菓子のさくら餅は、僕の子どもの頃の半分以下の個数まで減ってしまいました。
それは何故かというと、「値上げしないとやってられないけれど、値上げすると買ってくれない」からです。だから、値段は変えずに、個数を減らすことで対応しているのです。たしかに、僕らは表面的な値段の上昇にはうるさいくせに、内容量については盲目になりがちです。企業心理としては、個数削減対応は理にかなっているといえるでしょう。
でも、本当は、値段を上げた方が、消費者である僕らにとってもオイシイはずなのです。
今日はそんな記事を書きたいと思います。
モノの値段が上がらないわけ
今の日経株価は、日本市場の物価を上げるため
2017年、日経株価は上り調子を続けております。年内三万円宣言こそもう無理でしょうが、2.3万円ラインは安泰ではないでしょうか。
国家が経済成長するためには、ゆるやかなインフレが一番よいといわれています。このため国は2%の物価上昇を目標として掲げています。この目標を達成するため、日銀はじゃぶじゃぶ新札を刷り、がんがん株を買い、株価が上昇するようコントロールしています。株価が上がると、連動して物価も上がるからです。
デフレ経験から価格上昇を怖がり、価値を下げる選択をする市場
狙い通り、2017年の日経市場は、株価が右肩上がりで、誰が株を始めても概ねペイできるという奇跡の相場を続けています。しかし、その割には、モノの値段はそこまで連動して上がっておりません。何故でしょうか。20年以上続いたデフレ市場に消費者心理はすっかり冷めきっており、物価上昇に敏感になっているからです。
その結果何が起こるかというと、上に書いたような「モノの値段を上げずに価値を下げる」という見えない形での物価上昇というわけです。実際に、モノの値段を上げるのと、モノの価値を下げるのとだと、前者の方が後者より二割以上売り上げが落ちるそうです。なので、企業としては、こういう戦略をとらざるをえず、それで文句を言われるのはちょっとかわいそうなかんじもします。
値段を上げた方が僕ら消費者が得をする理由
というのが、2017年の今の日本で起きている状況なわけですが。
そのうえで、あえて僕が言いたいのは、「それでも、モノの価値を下げず、モノの値段上げていきましょう。そして、僕らはそれを買いましょう」ということです。
何故なら、その方が僕らにとって明らかに得だからです。以下、具体的にどういう点でメリットがあるか記載していきます。
個数減少調整より、値上げ調整の方がパッケージ費用が減る
価値を落とさず(=個数を減らさず)値段を上げると、逆の場合に比べてパッケージ費用を減らすことができます。
60本のウインナーを6本ずつ袋に詰める場合と5本ずつ袋に詰める場合では、前者より後者の方が二枚多く袋が必要になります。逆にいえば、6本ずつ袋に詰めれば、5本ずつ詰めた場合より袋を二枚削減できるのです。
このため、同物価でも、「個数落とす」と「値段上げる」だと、「値段上げる」の方がトータルではコストを削減できます。そのため、単価計算すると、「値段上げる」パターンの方が、消費者もよりコスパの高い商品をゲットすることができるのです。
ウインナーの例で考える
たとえば、「ウインナー6本を120円(単価20円)で売っていたけれど、138円(単価23円)で売らないとやってられなくなった。でも、値上げすると買ってもらえないから、ウインナー5本に減らそう」という場合、単価23円ですから本来115円のはずが、よけいにかかる袋代が5本のウインナーを120円にさせてしまうわけです。
素直に138円に値上げしていれば、60本のウインナーが1380円で買えるところが、個数を減らすとよけいなコスト分も負担しなければいけないため、1440円かかってしまいます。このよけいなコスト分を知らず知らず損しないためにも、素直に値段を上げた方がお得なのです。
個数減少調整より、値上げ調整の方が輸送費が減る
袋の値段がこんなに高いことは、実際にはないかもしれません。が、個数を減らした場合のデメリットは、まだあります。
それは搬入コストが増大することです。
パッケージ数が増えるということは、それだけかさばるということです。かさばるということは、一台のトラックで搬入する量が減るということです。ということは、同じ個数の商品を搬入するのに、その分輸送費がよけいにかかります。この増加する輸送費・在庫管理費などが更に見えない形で、コストとしてその商品に乗っかってくるのです。
スリムティッシュボックスが起こした革命
最近は、コンビニでもスーパーでもスリムなティッシュボックスを見かける機会が多くなりました。これは、製造技術の進化の賜物です。実は、このスリムなティッシュボックスが、ティッシュボックス市場に多大な売上改善をもたらした歴史をご存知でしょうか。
同じ枚数で形をスリムにするということは、その分パッケージ容積が減るということです。それはトラック一台あたりの搬入数を増やせて、輸送費・在庫管理費を削減できるということです。結果、スリムティッシュボックスは、それまでのティッシュボックスより大幅に低い原価を実現し、ティッシュボックス業界に革命を起こしました。
今起こっている「モノの個数減る」現象は、これとは逆の動きをしています。袋二枚の差は小さく感じますが、その袋二枚の差は、輸送費・在庫管理費という形で連鎖するため、本来1200円⇒1380円の値上がりで済んでいたはずの60本のウインナーが、1200円⇒1440円になってしまう事態は充分にありえる事態なのです。
まとめ
自然な価格上昇を後押しするために、単価表示文化がもっと根付いてほしい
個人的には、スーパーやコンビニにもっと単価表示文化が根付いてくれたらいいなと思います。
僕らはお馬鹿さんなので、モノの値段が上がったらぶーぶー文句を言ってしまいますが、単価表示がされていれば、本当はどちらがお得か客観的に判断できるような気がします。肉とかそうじゃないですか。見た目安くても、見た目高くても、主婦の皆さまは100gあたりの単価をチェックされていると思います。
同じことをからあげやチョコスナックやポテトチップスでやったら、値段を上げても消費者もついていきやすいんじゃないかと思うんです。
幸い、今、市場には個数減少施策のせいで本来以上に値上がりした商品があふれています。だから、まず個数減少した状態で単価表示をして、それからもとの個数に戻したらどうかと思うんです。そうすれば、見た目の値段は上昇しますが、単価表示は安くなります。消費者心理的に「安くなった!」という気持ちになって買いやすくなるんじゃないかと。
できるかどうかはわかりません。僕も素人なので。でも、いいんじゃないかなぁと思っています。
価格上昇している企業は、むしろ英断している
さておき、こういう背景があるので、素直に価格上昇している商品は、むしろ個数減少価格維持の商品よりもコスパ的にはいいはずなのです。なので、価格上昇している商品があったら、「この商品は、個数減少なんてアホなことでよけいなコストを増やさず素直に価格上げてくれたんだなぁ」と思って、買ってあげるのがいいんじゃないかと思います。
最近だと、すき家の値上げとか、かなり思い切ったなーと思います。しかも、並盛の価格を維持することで、消費者配慮しているあたり小憎いです。ワンオペ騒動の時はもうすき家ダメかなと思いましたが、そのせいか最近はかえって健全な方向にシフトしている気がします。本当に企業努力したんだと思います。
http://toyokeizai.net/articles/-/200724
いや、単に値段上げただけなのかもしれませんが。