先ほど、こんなまとめを読みました。
滅びの呪文「バルス」の考察が深すぎる – NAVER まとめ
今日は金曜ロードショーでラピュタを放送する日!以前の放送ではサーバーを落とす勢いだった「バルス」ですが、その「バルス」には謎がいっぱい。疑問と考察をまとめてみま…
「天空の城ラピュタ」に登場する滅びの呪文「バルス」をめぐる謎についての考察まとめです。ただ、どうも読んでいてしっくりこない部分がありました。
なので、今日は、自分なりに滅びの呪文「バルス」を考察してみたいと思います。折しも今日は金曜日。twitter上では、まさに本日、恒例のバルス祭りが開催される模様ですし。タイミングとしては、ちょうどよいでしょう。
滅びの呪文「バルス」をめぐる謎とは何か
まずは、最初に謎の定義です。「天空の城ラピュタ」において「バルス」をめぐる謎は、大きく二つあります。
どうやってシータはパズーに滅びの呪文を伝えたのか
まずはこれです。
滅びの呪文は、唱えるだけでラピュタを崩壊させる、まさに「滅びの呪文」です。唱えるだけで滅びるなら、シータはどうやってパズーに呪文を教えたのでしょうか?
何故「バルス」の呪文はあんなに短いのか
ふたつめの謎がこれです。
滅びの呪文とは、ラピュタを崩壊させる最終兵器的な禁忌のコマンドです。にもかかわらず、何故あんなに短いのか。うっかり唱えて、ラピュタが崩壊しちゃったりしたらどうするのか。
順に見ていきましょう。
考察1 : どうやってシータはパズーに滅びの呪文を伝えたのか
口にするだけで崩壊を招く滅びの呪文。それをシータはどうパズーに伝えたのか。よく言われるのは「最初はバ、次がル…」などのように、呪文を区切って伝えたというものです。しかし、これはどうでしょうね? 個人的には、この線はないかなぁと思っています。
シータは一度呪文を誤作動している
何故なら、「天空の城ラピュタ」前半で、シータは一度呪文を誤作動させています。「我を助けよ、光よ甦れ」のアレです。この事実から、シータの呪文に対する取り扱い意識の低さが垣間見えます。
そんな人間が、とっさに「最初はバ、次がル…」なんて機転を利かすでしょうか。滅びの呪文は秘密の呪文であり、彼女はそれを誰かに教えたり伝えたりすることを基本的に想定していなかったはずです。
まあ、失敗から学んで今度は慎重になったともいえますが。実は、もっとクールな説明の仕方ができるのです。
飛行石を持っていたのはパズーだったから
これです。飛行石を持っていたのはパズーだったから。
先ほどのシータ呪文誤作動事件のトリガーは、明らかに飛行石です。彼女は、そして彼女の祖母?は、呪文を継承させるうえで何度となくこの呪文を唱えています。しかし、誤作動はおこっていません。
両者の違いは何でしょう。飛行石です。普段は暖炉の内側にしまってある飛行石は、あの瞬間、シータの胸にありました。
また、作中、ムスカは執拗にシータの飛行石を狙っていました。そして、シータから奪った飛行石を使って、名台詞「見ろ、人がゴミのようだ」「君のアホ面には心底うんざりさせられたよ」事件を引き起こしています。つまり、これらの現象を引き起こすトリガーとして、飛行石は不可欠だったのです。
【王族といえど、飛行石がなければ、ラピュタの力は発動しない】のです。
区切って伝えようが、伝えまいが、どの道滅びの呪文は発動しなかった
ひるがえって、ラストシーンを思い出してみましょう。玉座の間で飛行石を所持していたのは、パズーの方でした。つまり、シータが「バルス」と唱えようが区切って伝えようが、あの時あの瞬間においては、崩壊現象は起きなかったはずなのです。
ね。こっちの方が説として綺麗でしょう?
考察2 : 何故「バルス」の呪文はあんなに短いのか
さて、考察の二番目です。
究極の破壊呪文「バルス」。その危険性に反して、バルスの呪文は短すぎます。わずか三文字です。うっかり誤作動したらどうするつもりなのか。その辺のセーフティはどうなっていたのでしょうか?
これに対して、よく言われる定説は「崩壊させたいと念じながらでないと、発動しない。だから大丈夫なのだ」です。しかし、これはなんだかしっくりきません。
ここまで読み進めてきたかたは、上記の考察1で提示した情報をもとに、もうこの仮説の不自然さに気づいているかもしれません。そう、つまり、問題というのは――
実際に呪文は誤作動しうるものである
これです。実際にシータは呪文を誤作動させているのです。
もし、呪文詠唱者の明確な意志がなければ呪文が発動しないのであれば、あのシーン(「我を助けよ、光よ甦れ」でぴきゅりーんのシーン)での呪文誤作動は発生しえなかったはずです。
筆者は、バルスの呪文を発動させるのに、詠唱者の意志は無関係だと思っています。飛行石をめぐるラピュタの呪文は、そういった意志とは無関係な、もっと絶対的な単なる機能なのだと思います。まさしく科学です。
「天空の城ラピュタ」に登場する呪文は、決して不思議な魔法なのではなく、飛行石という媒介を通してとりおこなわれる超化学なのです。
仮に意志がトリガーになっていたとしても、安全性には疑問の余地がある
よしんば、あの時のシータが「ああ、誰か助けてくれないかな…」と心の中で思っていて、飛行石がその思念をキャッチしたのだとします。
しかし、少なくともシータはあの時明確に呪文を発動させようと思っていたわけではないでしょう。「ああ、誰か助けてくれないかな…」という気持ちは、非常にぼんやりとした、ごく素朴な彼女の願いだったはずです。
そんな曖昧な思念で呪文が発動しうるなら、やはりバルスの安全装置としてはいささか緩すぎます。「ああ学校行きたくない、ラピュタおっこちねえかなあ…」程度の軽い気持ちで発動してしまいそうです。セーフティとして充分とはいえません。
では、何があの短い呪文「バルス」の安全性を保障していたのでしょうか?
考察2の続き : 何故「バルス」の呪文はあんなに短いのかを、もう少し考える
前述したとおり、筆者はラピュタ族に伝わる呪文を、単純に機能的な、物理的な、科学現象だと捉えています。であれば、その発動条件を縛るセーフティもまた、単純に機能的な、物理的な枷でなければなりません。
筆者の考える説はこうです。
「バルス」の呪文は、玉座の間でしか機能しない
ムスカは、もっぱら巨大飛行石の前の石版で、ラピュタの権能を操っていました。「読める、読めるぞォ…!」なんて言いながら。いわば、石版はコントロールパネルといっていいでしょう。
これは、おそらくラピュタ全盛期も同様で、普段使いの力の行使は、もっぱらあのコントロールルームでとりおこなわれていたのではないかと思います。
対して決戦の舞台は玉座の間でした。実は、この場所こそがバルス発動のカギだったのではないでしょうか。滅びの呪文を知っているのはラピュタ王家の人間です。そして、玉座の間に入れる人間も、普通に考えれば王家の人間でしょう。あの玉座の間は、いわば有事の際のセキュリティルームだったのではないでしょうか。
「バルス」の呪文は、二人以上が唱えてはじめて機能する
そして、もうひとつ推したい説がこれです。前述の説とこの説のどちらかが正しいというよりは、両方とも正しい複合セキュリティシステムだったのではないかと思っています。
つまり、「バルス」は単独詠唱では機能しない、複数人で唱えて初めて効果を発揮する呪文だったのではないでしょうか。
これは、安全面を考慮する立場の気持ちになって考えると、かなり自然でしっくりくる仮説です。
つまり、一人以上の承認者を用意することで、安全性を担保しようという発想です。現実にも、こういったダブルオペレーションによって誤作動防止策をとっている職場は結構あるんじゃないでしょうか。指さし確認ならぬ手合せ確認。二人が同時に飛行石に触り、「バルス」と唱える必要があった――。
これが筆者の考える「バルス」誤作動防止仮説です。
まとめ
というわけで、自分の仮説をまとめますと以下のとおりです。
- 呪文は、必ず飛行石を媒介とする。
- 滅びの呪文「バルス」を唱える場所は、玉座の間でなければならなかった。
- 滅びの呪文「バルス」を発動させるには、二人以上での詠唱が必要。
いかがでしょうか。これなら全部飛行石の持つ機能的な制限として、現象に説明がつきます。
ご都合主義という壁
唯一の難点は、いささかご都合主義すぎるのではないかということです。
上記の仮説を信じるなら、シータとパズーがムスカに打ち勝てたのは、彼らが偶然玉座の間に追い詰められ、彼らが偶然二人で呪文を詠唱したからということになります。そんな偶然が起こりうるものでしょうか?
超科学を破る偶然と幸運、それを人は奇跡と呼ぶ
しかし、これは話が逆だと思っています。
つまり、発動条件が厳密だからこそ、二人の勝利は偶然と幸運に頼るしかなかったのではないでしょうか。
何の安全策もなくバルスという呪文があったとは考えにくい、そのうえでパズーとシータがバルスの呪文を成立させられるパターンがあるとすれば、それは何か? 偶然と幸運しかなかったと思います。
実際には、あのラピュタの崩壊は、おそろしく危うげなバランスの上、辛くも掴んだ勝利だったのではないか。それこそ、奇跡と呼んでもいいほどの。そう思うのです。